「ゆるトレーニング」と聞くと、軽い体操やリラックス法をイメージする方が多いかもしれません。
ですが、実はその本質はまったく異なります。
ゆるトレーニングとは、筋力や体力を鍛えるための運動ではなく、体の奥深くに眠る「身体意識」を整え、自由でしなやかな動きを取り戻すための高度なトレーニングです。
スポーツ選手や武道家のしなやかな動きの秘密ともいえる「フリーな身体意識」を育てることが目的であり、そのためには単なる形の模倣ではなく、感覚そのものを変える必要があります。
本記事では、ゆるトレーニングとは何か、その効果や難しさ、そしてなぜ現代人に必要なのかをわかりやすく解説します。
- ゆるトレーニングとは何か、その本質と目的
- フリーな身体意識とスティフな身体意識の違い
- なぜ身体意識を整えることが重要なのか
- ゆるトレーニングの難しさと習得のポイント
身体意識トレーニング=ゆるトレーニングということ

身体意識トレーニングとは、単に筋肉や体力を鍛えるための運動ではなく、人間が本来もっている深層的な身体感覚である「身体意識」を育てるためのトレーニング法です。
身体意識は「身体の設計図」とも呼べる概念で、姿勢・動き・呼吸の在り方などすべてのものに大きく影響を与えています。
この身体意識を変化・発達させるために考案されたのが、「ゆるトレーニング」です。

ゆるトレーニングを簡単に説明したのだ
名前だけを聞くと「軽い運動」や「リラックス法」と思われがちですが、実際には非常に繊細かつ高度なトレーニング体系です。
なぜ「ゆるむ」ことが重要なのかというと、身体が拘束的になっている状態では、本来の動きが引き出せなくなるからです。



ゆるんでいないと上達しないのだ…
スポーツや武道の達人と呼ばれる人々は、共通して全身の力みを取り除き、自由でしなやかなフリーな身体意識をもっているとされています。
このフリーな身体意識をつくるために必要なのが「ゆるむ」ということで、ゆるむことで拘束的な身体意識が取り除かれ、フリーな身体意識を作ることができるようになるのです。
ゆるむことでフリーな身体意識が形成される
そして、ゆるトレーニングはこの状態を目指すために、筋力や記号的な技術に頼らず、身体の奥深い部分に眠る感覚を呼び覚まし、動きの質そのものを変えていくために必要なのです。


フリーな身体意識とスティフな身体意識の違い


身体意識は、私たちの姿勢や動きの質を決める「体の設計図」のようなものです。
その中でも大事な考え方が「フリー」と「スティフ」という2つのタイプの違いです。
フリーな身体意識とは、体がしなやかで自由に動ける状態のことです。
関節や筋肉に余計な力みがなく、重心の位置がわかり、体全体のバランスが取れているため、重心のズレや少ない力で効率よく動くことができます。
スポーツ選手や舞踊家、武道の達人の動きが自然で軽やかに見えるのは、このフリーな身体意識を持っているからです。
一方で、スティフな身体意識は、身体が拘束的になり、関節や筋肉の動きが硬くなり動きがぎこちない状態を指します。
このような状態になると、重心の位置やバランスと感じることができず、記号的に身体を使う必要が出てきてしまいます。



身体をこのように使うというような指導がこれなのですわ…
肩や腰などに力が入りすぎ、関節の動きが制限されることで、動作が不自然になったり、呼吸が浅くなったりします。
このような状態では、運動のパフォーマンスが下がるだけでなく、体の疲れや痛みも出やすくなります。
身体意識には「フリーな身体意識」「スティフな身体意識」の2つが存在する
フリーとスティフの違いは、単なる体の柔らかさではありません。
フリーな状態では力が全身にうまく分散し、重心の移動や体の軸のコントロールがスムーズにできます。
一方、スティフな状態では力が偏ってしまい、無駄な力を使ってしまうため、動きが重くなってしまうのです。


人は自分の身体意識通りにしか動けないということ


身体意識は、私たちがどんな姿勢で立ち、どう歩き、どのように力を使うかを決めている「体の内部の設計図」のようなものです。
骨盤や背骨の位置、関節の動かし方、重心の置き方などが無意識のうちに決まっていて、そのパターンが私たちの動きを作っています。
ここで大切なのは、どれだけ「こう動こう」と意識しても、実際には自分がもっている身体意識の範囲でしか動けないということです。



身体意識通りにしか人は動くことができないのだ…
例えば、プロのスポーツ選手のフォームを真似しても、同じように動けないのは、内側の身体意識がまったく違うからです。
見た目だけを真似しても、体の奥で支えている構造が違えば、力の伝わり方やバランスが根本的に異なってしまうのです。
例えば、バレエダンサーの立ち姿や武道家の一歩には、普通の人にはない高度な身体意識が働いています。
骨や筋肉の使い方が整っているからこそ、同じ動作でもしなやかで安定した動きになります。
一方、身体意識がスティフな人は、フリーな身体意識ではなくスティフな身体意識で動作をしてしまいます。
これは、フリーな身体意識とは根本の構造が違うため、外見だけ真似しても同じような動きにはならないのです。
同じ動きに見えても身体意識が違うと動きは全く違うものになる


なぜフリーな身体意識がなければゆるトレーニングはできないのか
ゆるトレーニングは、体の奥にある「身体意識」を整え、動きを根本から良くするためのトレーニングです。
そのために必要なのが「フリーな身体意識」です。
フリーな身体意識とは、体に余計な力みがなく、関節や骨が自然な位置で重心がゆらいでおりバランスよく働いている状態です。



フリーフルクラムがある状態のことを指すのだ!
逆に、体が固まってこわばっており、拘束的な意識である「スティフな身体意識」では、ゆるトレーニングの効果は出ません。
体が固まっていると、トレーニングで大切な「ゆるむ感覚」や「自然な動き」が再現できないからです。
簡単なトレーニングをとっても体が固いままでは形だけの動きになり、本来の効果は得ることはできないのです。



スティフな身体意識をどれだけ取り除けるかが重要なのですわ…
実際、スポーツや芸術の一流選手がゆるトレで大きな成果を出す一方で、普通の人が同じことをしてもあまり変化を感じられないことがあります。
これは、もともとの身体意識の質が大きく違うからです。
フリーな身体意識がある人は、ゆるトレの感覚をすぐ理解して実践できますが、スティフな人はその入り口に立つことさえ難しいのです。




ゆるトレーニングの難しさと現実とは


ゆるトレーニングは一見「簡単そう」「誰でもできるリラックス法」のように思われがちです。
実際に、書籍では誰でも簡単にできることをアピールしていますが、実際には非常に高度で難易度の高いトレーニングです。
その理由は、動きの外形やフォームを整える一般的な運動と違い、身体意識という目に見えない深層構造を直接変えていくことを目的としているからです。
ゆるトレーニングは名前とは違い非常に高度なトレーニング方法
表面的な形をなぞるだけでは成果が得られず、内側から「ゆるむ」ということを通して、動きの根本を作り変える必要があるのです。
しかし、この「ゆるむ」という感覚は多くの現代人にとって非常に掴みにくいものです。



ゆるむとは簡単そうで非常に難しいのですわ…
特に、デスクワークや長時間の緊張状態で生活している人は、無意識のうちにスティフな身体意識が強くなっており、ゆるトレーニングの動きを再現する入口に立つことさえ難しいのが現実です。
具体的な例として、プロスポーツ選手でさえ、高度なゆるトレーニングを正確に行うことができない場合があります。



僕ら凡人にはメッチャクチャ難しいのだ….
日本代表クラスのアスリートでも習得が難しいのですから、一般の人が短期間で習得するのはなおさら困難です。
また、指導者不在で独学に取り組むと、感覚を誤解したまま形だけを真似してしまい、本来の効果が得られないまま挫折するケースも少なくないのです。
このような現実を踏まえると、ゆるトレーニングは単なる「軽い運動」ではなく、身体意識を深く理解し、時間をかけて少しずつ変えていく訓練だと言えます。




記事のまとめ
記事をまとめます。
- ゆるトレーニングとは身体意識を整えるための高度なトレーニングである
- 身体意識とは姿勢や動作を決定する体の設計図のようなものである
- フリーな身体意識は力みがなく自由で効率的な動きが可能である
- スティフな身体意識は拘束的で動きがぎこちなくパフォーマンスが低下する
- 人は自分の身体意識の範囲でしか動けず外見の模倣では効果が出ない
- ゆるトレーニングにはフリーな身体意識の獲得が前提となる
- 身体が固まっている状態ではゆるトレーニングの効果が出にくい
- 一流のスポーツ選手はフリーな身体意識をもっているため成果が出やすい
- ゆるトレーニングは形ではなく深層感覚を変化させることを目的とする
- 多くの現代人はデスクワークや緊張でスティフな身体意識が強まっている
- 独学では誤った感覚で形だけを真似し効果が出ないリスクがある
- 習得には時間と専門的な指導が必要であり簡単ではない
ゆるトレーニングとは、単なる運動やリラックス法ではなく、身体の深層にある意識そのものを整え、自由でしなやかな動きを取り戻すための奥深いトレーニングです。
見た目の形を真似するだけではなく、内側から感覚を変えていくことで初めてその効果が現れます。
もしあなたが「もっと自然に動ける体を手に入れたい」「日常やスポーツのパフォーマンスを高めたい」と思っているなら、身体意識を整えることが欠かせません。
ゆるトレーニングは、そのための大きな一歩となるはずです。