社交ダンスで「達人」と呼ばれるレベルに到達するには、技術だけでなく、身体の使い方や感覚を高度に発達させることが重要です。
この記事では、社交ダンスの達人がどのように身体を使いこなし、効率的な動きを実現しているのか、その秘訣を解説します。
達人が実践する「組織分化」とは何か、そして全身を効果的に使うための方法を知ることで、あなたのダンスも飛躍的に上達することでしょう。
社交ダンスの真髄に迫り、達人を目指すヒントをお届けします。
- 社交ダンスの達人が持つ身体の使い方の特徴
- 「組織分化」による身体の効率的な使い方
- 達人が実践する柔軟な身体作りの方法
- 効果的なトレーニングで達人レベルに近づくためのコツ
達人とは
達人を厳密に定義するのは難しいですが、次のように考えることができます。
- 身体の隅々まで使いこなせる
- 効率的に身体を使える
まず、身体の隅々まで使いこなせるという点についてですが、達人は一般人と比べて圧倒的に身体の開発が進んでいます。
そのため、一般人が使えない筋肉や感覚を駆使して身体を動かすことができるのです。
このためには、身体の細かい部分まで感覚を行き渡らせ、それぞれを分けて使うための知識が必要です。
次に、身体全体に感覚が行き渡っているため、効率的に身体を使うことができます。
達人は身体を細かく使い切ることができるのだ
例えば、腸腰筋を活用することで下半身の力を上半身に伝えたり、逆に上半身の力を下半身に活かしたりすることも可能です。
つまり、一般人が使えない身体の部分を発達させ、さらにそれを駆使することで、神業的な技を繰り出すことができるのです。
達人の身体とは
では、達人の身体とはどのようなものなのでしょうか。
どの分野でも、チャンピオンレベルの人たちの身体は、一般の人と比べてまったく異なっています。
実際に触れてみると感じる特徴は以下のとおりです。
- 隙がない
- 非常に柔軟である
最初にあげられるのは、「隙がない」身体です。
身体の開発が進んでいるため、全身を効率的に使うことができ、どこを触ってもしっかりとしていて、無駄がありません。
一方で、達人の身体には、非常に「ゆるんでいる」ことが前提条件として挙げられます。
「ゆるんでいる」とは「たるんでいる」とは異なり、身体を緩めたり引き締めたりする範囲が非常に広い状態を指します。
わかりやすく言えば、脱力と引き締めのコントロールが非常に幅広くできるということです。
達人の身体はバキッとしているけど柔らかいのだ…
つまり、隙がないだけでなく、筋肉は非常に柔らかく、フワッとした状態を保っているのです。
これはまるで赤ちゃんのように柔軟で、必要なときには瞬時に力を発揮できる状態になります。
達人の身体は隙がなく常にゆるんでいる状態にある
社交ダンスで達人だった人物
社交ダンスにおいて、国内で達人とされる人物の一人が橋本剛先生です。
橋本先生は他の選手と比べても、身体の組織分化のレベルが非常に高いです。
「組織分化」とは、身体の各パーツをどれだけ細かく、効率的に使い分けられるかを指します。
橋本先生が他の選手よりも秀でているのは、特に下半身の分化度合いです。特に脛骨周りがよく発達しており、脚の軸の精度が非常に高く見えます。
さらに、上半身に関しても、体軸だけでなく、重心に対する垂直な軸である「垂軸」がしっかり立っている点が印象的です。
垂軸がしっかりしていると、姿勢がスッと整い、他の選手と比べて圧倒的な存在感を生み出すことができます。
社交ダンスで達人になるには
組織分化
社交ダンスで達人になるためには、どのようなアプローチを取ればよいのでしょうか?
これは社交ダンスに限らず、野球や陸上競技、サッカーなど、他の分野にも共通する要素です。
まず重要なのは、徹底的な「組織分化」です。端的に言えば、身体のすべてのパーツを独立して動かせるようにすることです。
ただし、実際に身体が物理的にバラバラになるわけではありません。パーツごとに分けて使う能力を身につけると同時に、各部位の感覚を高めていくことが求められます。
わかりやすく言えば、身体を10個のパーツで使える人と100個のパーツで使える人がいた場合、後者のパフォーマンスが圧倒的に高くなることは直感的に理解できるでしょう。
なぜなら、100個のパーツで身体を使える人は、より多くの筋肉や関節を効果的に連動させ、細かく滑らかな動きができるからです。
その結果、動きには力強さが増し、キレが出てくるのです。
達人は身体のパーツが細かいのだ
パーツを細かく分けて使うことで、単純に筋力やスピードを向上させるだけではなく、全体としての身体のコントロール力が格段に向上します。
分離と統合
次に重要なのは、バラバラに分けた身体のパーツをまとめて使う能力です。
分けたパーツを効果的にまとめて使うことができなければ、全体的なパフォーマンスが成り立ちません。
たとえば、野球を例に考えてみましょう。肩甲骨を非常に発達させて、肩甲骨を自由自在に動かせる選手がいたとしても、肩甲骨だけでボールを投げても、意外と遠くに飛ばないことがあります。
使い方がバラバラだと身体の芯から力は発揮できない
これは、肩甲骨周りの筋肉だけでは十分な出力が得られないからです。
肩甲骨周りの開発は、あくまで身体全体の力を効率的に指先に伝えるための一要素であり、それ自体が単独で大きな力を生むわけではありません。全身の連動が重要です。
ここで「全体を使うなら、そもそもパーツごとに開発する必要はないのでは?」という疑問が湧くかもしれません。たしかに一見その通りに思えますが、それは誤解です。
なぜなら、パーツを個別に分けて使う能力がないと、動きに関わる不必要な筋肉や組織が無駄に働いてしまい、力みや動きのブレーキとなってしまうからです。
必ず身体を分けていく方向のトレーニングが必要なのですわ
これが結果としてパフォーマンスの低下につながります。
つまり、必要な部分だけを効率的に使うためには、まずはパーツをしっかりと分けて使う能力が不可欠なのです。
その上で、分けたパーツを調和させ、全身を一つにまとめて使うことが、高度なパフォーマンスを発揮するための鍵となります。
達人になるトレーニングとは
ゆる体操とは
達人になるためのトレーニング方法として「ゆる体操」が有名ですが、ご存知でしょうか?
これは、高岡英夫先生によって考案された体操法で、簡単に行え、楽しく健康を促進しながら能力開発効果も期待できる点で多くの人々に支持されています。
さらに、ゆる体操を専門的に実践することで、身体意識を高め、身体能力の開発にもつながる点が注目されています。
では、なぜゆる体操が重要なのでしょうか?
その理由は、ゆる体操を行うことで、長年染みついた体のクセやこりを取り除けるからです。
体のクセが解消されることで、より自然で効率的な動きが可能になり、無理なく能力を引き出すことができます。
ゆる体操の最終的な目的は、体を「ゆるませる」ことにあります。これは、身体の「組織分化」の土台となる、非常に重要な概念です。
極意トレーニングの重要性
次に重要なのは、身体の正しい使い方を学ぶことです。
そのためには、まず徹底的に身体のクセを取り除くことが大切です。
クセが残ったままトレーニングを行うと、そのクセに基づいた非効率な身体の使い方が定着してしまい、効果的なトレーニングができなくなってしまいます。
そもそも、最初からクセが全くないというのはほぼ不可能です。そのため、クセを取り除きながら正しい身体の使い方を学ぶことが必要となります。
では、正しい身体の使い方とは一体何でしょうか?
そのヒントとなる概念はいくつかありますが、最も効率的な方法は、達人の身体の使い方を研究することです。
達人の動きを分析していくと、自然界の動物の動きや、昔の人々の身体の使い方に共通点があることがわかります。
例えば、文献によると江戸時代の人々は、1日に30〜40キロも歩いていたとされています。
彼らは驚くほど高いレベルで体を支え、使いこなしていたことが伺えます。この時代の人々は、無理なく効率的に体を動かす方法を自然に身につけていたのです。
こうした身体の使い方を体系的に研究したのが、高岡英夫先生でこの知識を「極意」として体系化し、その理論を後世に伝えています。
この極意を理解していくことで、身体の使い方における本質的な部分を深く掘り下げ、効率的な動作や高い身体能力を引き出すことができるようになります。
記事のまとめ
記事をまとめます。
- 達人は身体の隅々まで使いこなす能力を持つ
- 身体の「組織分化」が達人の動きを支える
- 腸腰筋など、一般人が使いづらい筋肉を効率的に活用する
- 達人の身体は隙がなく、無駄のない状態である
- 柔軟性と強さが共存する身体が達人の特徴である
- 脛骨などの下半身の発達が動作の精度に影響する
- 上半身の垂直軸「垂軸」が達人の姿勢を安定させる
- パーツごとに身体を細かく使い分けることが重要である
- 「ゆる体操」は身体をゆるめ、達人の動きに近づく方法
- 身体を分けて使い、全体でまとめて動かす技術が必要
- 身体のクセを取り除くことで、動きがスムーズになる
- 全身の連動を高めることが、達人への近道である
社交ダンスで達人を目指すには、身体の使い方を根本から理解し、細かな筋肉や感覚を駆使することが重要です。
達人が実践している「組織分化」や柔軟な身体作りは、単なる技術ではなく、日々のトレーニングと意識的な身体の使い方の結果です。
今回紹介した方法を取り入れることで、あなたの社交ダンスも一歩上達し、達人への道が開かれるでしょう。
焦らず、体感を磨きながら、理想の動きを目指していきましょう。